吉田隼人


はなびらは花にはぐれてゆくものをいめゆ取り零されし残月

川野芽生「老天使」(『朝日新聞』2018年4月18日夕刊)

 花びらと花とを区別し、花という概念から風に舞い、散っていく花びらを区別してしまう冷酷さ、それを「はぐれてゆく」と幼少期の不安にも重なるような語彙に収めていく手つきなど、限りなく恐ろしくありながら、あくまで美しい歌である。

いめ、は夢の古称。はなびら、という言葉に当てた難字とあわせて、作者の志向=嗜好が読み取れる。花びらは花の木から散っていくことで「はぐれてゆく」のだが、残月は夜が明けてもなお夢を介して残り続けることで「取り零され」る。その対比も効いていて、シンメトリックな構成とアシンメトリックな内容とで幻惑感を起こさせる。