吉田隼人


始祖鳥の自由研究 ノートからはみ出してゐる翼の図解

石川美南『体内飛行』(短歌研究社:2020年)

 恐竜について自由研究(という名の図鑑や雑誌の引き写し)を提出して何かの賞をもらったことがあったのを思い出す。始祖鳥といっても自由研究なのだから大変な発見が書かれているわけではあるまい。いろいろな資料をあたって、それを大学ノートのようなものに手書きで書き写したのだろう。翼の図解だって、自由研究にしてはレベルが高いかも知れないが、どこかに載っていたものを書き写しているうち、ノートでは幅が足りなくなってはみ出してしまったのではないか。

しかし紙を継ぎ足して貼ったにせよ、なにか翼の図解がそのまま始祖鳥の翼になって羽ばたきだしそうな、今にもノートから飛び出して、あるいはノートごと始祖鳥になって飛んで行ってしまいそうな感を与えるのもまた事実である。ノートの形状は開けばきっと翼を拡げた始祖鳥に似ている。今にも飛び出しそうな始祖鳥の翼の図解が書かれたノート、その今にも飛び出しそうな感じの原動力になっているのはノートからはみ出すほど翼の図解を書くことに熱中したわたしの気持ちなのであろう。