吉田 隼人


天たかく馬がこえてはならぬ一線をこえわたしもつれてって

望月裕二郎「ずいぶんとおくにきてしまったな」(『ねむらない樹』vol.2、書肆侃侃房:2019年)

 天高く馬肥ゆる秋、という成句をもじった一首。肥えるのではなく超えると読み替えることで「超えてはならない一線」という別の成句と組み合わせることができる。

超えてはならぬ一線を超えてしまった馬は天馬になるのだろうか。超えてはならない一線を超えてしまった馬に、わたしも連れて行ってほしいと願う。わたしも超えてはならぬ一線を超えてしまいたいと思う。それでも一線を超えていけるのはきっと跳躍力の並外れた馬だけで、わたしは「つれてって」と願ってもかなわない。わたしは地に足を付けて、天高く「超えてはならぬ一線」を超えていく軽やかな馬を、ただ見つめていることしかできない。