坪内稔典『豆ごはんまで』(2000年)
『古事記』には、穀物の女神、大気都比売(おおげつひめ)の次のような話が出てくる。
須佐の男の命が食物を求めたとき、大気都比売は、鼻や口や尻からいろいろおいしいものを取り出して、料理してさしあげた。
これを見た須佐の男の命は、きたないことをすると思って、この女神を殺してしまう。殺された体から、頭に蚕が、目に稲種が、耳に粟、鼻に小豆、陰に麦、尻に豆ができたという。
掲出歌は、このおおらかで豊かな神話を一気に五月の季節感に収束したところで、「るるんぷいぷい」と放ってみせる。
るるんぷいぷいって何?
そう思いながら、神話の力に負けじとふりしぼられたような、このオノマトペ、なかなか力があって、ユーモラスだ。
明るい光に満ちた、豊穣印のオノマトペである。