大松 達知


発言は波立つような反感をみちびきたれど反論はなし

今井恵子『白昼』(2001)

 

 じんわりと、嫌な感じが伝わってくる歌である。今井恵子の歌には、こういう、物事の裏側への認識を、あっけらかんと言ってしまう怖さがあり、怒りがある。

 

 「発言」と言い、「波立つような」と言っているから、仕事場などで、大人数の人たちが話をしている場であるようだ。

 4、5人で食事をしていたり、立ち話をしている場ではないだろう。「波立つ」という感じは、上から見下している感じがする。つまり、発言者である「私」は起立して公式の発言をしているのである。

 発言に反感を持たれているな、と感じることはある。そういうときは、もちろん自分の発言内容にトゲがあることを知りながら話すわけであるし、聞き手の姿勢や視線の方向などによっても推測される。

 それはは、発言の是非だけでなく、プライベートでの人間関係や過去の経緯なども絡み、緊迫した場面なのである。

 しかし、人間関係を考慮して、反論するには至らないこともある。

 そのあたりの、ねっとりじくじくとした、見えない光景を読みあてているのが、みごとである。