中津 昌子


木のこゑと風のこゑとがまじりあふ秋の硝子を磨きてをれば

渡英子『みづを搬ぶ』(2002年)

 

 

木の葉の鳴る音。
風の吹く音。
秋になれば、秋の表情をもつそれら。
ていねいに生活するなかで、その音を、表情を聞きとめる。

 

「こゑ」という表現によって、「木」や「風」が、いっそう人間に親しい、互いに生きる者としてとらえられていることを伝える。
そのせいだろう、歌のなかで「まじりあふ」とされているのは、「木のこゑ」と「風のこゑ」なのだが、それだけでなく、キュッキュッとガラスを磨く音や、〈わたし〉の息づかいといったものまでが、混然と一つになって感じられる。

「硝子」という透明な素材が、その感じを妨げないだけでなく、さらに促すようだ。

気持ちのいい、そして安らかな秋の歌。

 

・ゴールデン・レトリヴァーに秋の陽光(ひかり)のあつまりて幸福な絵は絵のごとく見ゆ