大松 達知


「雨だねぇ こんでんえいねんしざいほう何年だったか思い出せそう?」

笹井宏之『ひとさらい』(2008)

 

 ナンセンスに言葉や事象を結びつけて、そこからこぼれおちる詩を掬い取る作者。そこにうっすらとした哀しみの色が透けている

 おそらく、そういう言葉遊びの中に、療養中であったという自身の生と死のせめぎ合いを見つけようとしていたのかもしれない。理不尽に思えたかもしれない病気との付き合いから、不可思議さでいっぱいな現実を見通す作者なりの方法だったのだとも思う。

 2009年没。享年26。

 

 墾田永年私財法(743年)、は義務教育を通過すれば聞いたことくらいはあるだろう。しかし、その内容を掘り起こしても歌の解釈につながらない。

 歴史上の大事件と現在の(つまりは歴史の最先端の)自分たちが、年号を思い出すことでほのかにつながるのがおもしろい。

 しかし、その年号を思いだしても、法の発布と現在の自分に関わりができるわけではない。ただなんとなく当時の人々の暮らしを思い、現在の自分と比べたりするだけだろう。そのあたりの、突き詰めてゆかないところがいい。

 

 電子辞書をひくと、見出しに「こんでん・えいねん・しざい・ほう【墾田永年私財法】」という表記が見られる。それが発想の源だったかもしれない。