石川 美南


身の中にマブチモーターを仕込んでるとしか思えぬ奴の素振りだ

しんくわ「卓球短歌カットマン」(2004)

 

卓球といえば、やはりどうしても「卓球短歌カットマン」を思い出してしまう。2004年、第3回歌葉新人賞を受賞した30首だ(『短歌ヴァーサス』vol.7にも収録)。

 

海賊のような髪形をとりあえずなんとかするため 投げ上げサービス

卓球やあらゆる間接キスなどに負けるわけにはいかない僕らだ

シャツに触れる乳首が痛く、男子として男子として泣いてしまいそうだ

あの子は僕がロングドライブ決めたとき 必ず見てない 誓ってもいい

我々は並んで帰る (エロ本の立ち読みであれ五人並んでだ)

 

久しぶりに読み返したが、また笑ってしまった。キマッてない髪形をごまかすためにわざと激しいサーブをしたり、「同じ蛇口で水飲んだくらいで間接キスとかいちいち大騒ぎすんなよー」などと硬派を気取りつつ、内心は自分もドキドキしちゃっていたり。卓球部の男子たちのダサくも輝かしい青春が、字余り気味、かつ「~だ」を連呼するコミカルな文体で鮮やかに切り取られており、何とも甘酸っぱい気分になる。

マブチモーターは様々な製品に用いられているが、この中学生がマブチモーターという単語を知ったのは、十中八九、子どもの頃から親しんできたミニ四駆の影響だろう。「モーターを仕込んでいる」でも意味は十分通じるはずだが、わざわざ「マブチモーター」と断るところにまた中学生臭さが表れているようで、おかしい。

高性能マシンのごとく素早い素振りを繰り返す「奴」は、きっと強い。しかし、僕は負ける訳にはいかないのだ。なぜなら今日こそ、今日こそ、僕のかっこいい姿をあの子が見てくれるかもしれないから、だ。