石川 美南


あまだむ軽きジャンプの終るまで地球の自転やや遅くなる

山吹明日香『風返し峠』(1997)

 
子どもの頃、隣の家のお姉さんからもらった少女マンガの中に、ダンスをテーマにしたものがあった。誰のなんというマンガだったかはもう思い出せないのだが、次のようなシーンがあった(約20年前の曖昧な記憶で書いているので、ディテールは違っているかもしれません)。男女がペアになって踊るオーディションで、5拍子の曲が課題になる。3拍子や4拍子のリズムに慣れた身体には、5拍子に合わせるのがなかなか難しい。それでも何とか踊りこなしてほっと一息ついていると、今度は「同じ振りを6/8拍子に合わせて踊ってください」という課題が出る。主人公の女の子は、5拍子の振りを「3+2」に分け、「2」の部分のジャンプを3拍に引き伸ばして「3+3」拍子に合わせる、という方法を採るのだが、後半の「3」に差しかかるたび、身体が後ろに引っ張られるような重さを感じて、気持ち良く踊ることができない――。そのオーディションの結果がどうなったのかは、覚えていない。しかし、2拍分のジャンプを3拍こらえる難しさ、というのは妙に生々しく伝わってくるものがあって、印象に残っている。こういう課題は、ダンスの現場で実際に出るものなのだろうか。

 

さて、山吹明日香の一首である。

「あまだむ」(天飛む)は枕詞。「天を飛ぶ雁」の意味で、「軽」にかかる。4音の枕詞には、他に「うまさけ」「そらみつ」などがあるが、本来5音あるべき初句が4音しかないと、何か欠落しているような、あるいは一拍の長さがちょっと伸びるような、変な感じがする(そう、私が唐突にオーディションのシーンを思い出したのは、「あまだむ」のせいなのだ)。

この歌の場合、「あまだむ」はお約束通り「軽」にかかりつつ、リズムの面でも、地を蹴って高くジャンプするときの体感――まさに、地球の自転がやや遅くなって感じられるような――を、体現しているように見える。企みに満ちた、巧みな枕詞の使い方だと思う。
 
紹介の順序が逆になってしまったが、山吹明日香「ジャンプターン」は、新体操をモチーフにした一連である。
 
  純金を延ばす匠(たくみ)の指にそひ反らされてゆく少女(をとめ)の肢体

  白き薔薇つぎつぎ空に咲かせむとリボン振りては8の字を描く

  関節に星を飾ればひねられし四肢はいかなる星座をつくる
 
少女のしなやかな身体が、純金や薔薇、星といった華やかな比喩に彩られ、美しく描かれている。