石川 美南


いくたびも廻転扉(ドア)に吸はれ入り芝郵便局に新しきコスモス運ぶ

宮英子『婦負野』(1969)
 
「コスモス」とは、宮英子の夫宮柊二が1953年に創刊した歌誌。英子は、創刊当時から編集に携わっていた。

 

この歌は、コスモス創刊1、2年ほどの時期の作だろうか。「いくたびも廻転扉に吸はれ入り」というフレーズから、発送作業のめまぐるしさがよくわかる(回転ドアを急いでくぐるときは、確かにすっと「吸はれ入」る感じがするものだ)。

 

下の句は、「芝郵便局にコスモス運ぶ」だけで定型に収まるのだが、字余りにしてまで「新しき」を挟んでいるところに、雑誌が完成した喜びが滲んでいるように思う。

 

この歌の前後には、以下のような歌が置かれている。
 
  眠たき頭を平手に搏ちながら書かねばならぬ午前二時すぎ

 

  うづ高く構内車に積まれゆきしコスモス明日より友らに届きわたらむ
 
入稿直前の辛さと、発送作業がようやく終わった後の達成感。この雰囲気、編集作業に関わったことのある人ならば皆大いに共感できるのではないだろうか。

 

10年ほど後の作だが、「コスモス編集分室」というタイトルのついた一連の、
 
 終電車に得たる座席に赤インク染みたる指を組みて居ねむる
 
も、しみじみとした疲れが伝わってきて、いい。