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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
道ひとつ渡りて小さくなる兄の振り返り見る父も小さし
そのあとはわれの鎖骨をこんこんと叩いてきみは眠るのだった
「そら豆って」いいかけたままそのまんまさよならしたの さよならしたの
前籠に午後の淡雪いっぱいに詰め込んだまま朽ちる自転車
アトリ科の鳥とのみしか分からぬが柿の枝より移りてゆけり
つはぶきの花は日ざしをかうむりて至福のごとき黄の時間あり
とどろける環状七号線上の橋をしょんがらしょんがら渡る
十月の雨そぼふりぬ公園にをさなごひとりゲートボールす
まだ会社に慣れないせゐかオフィスでは鏡と犬が区別できない
しんじつを知りてしまいし人の名のまたひとつ神の指にて消さる
やがてわが街をぬらさむ夜の雨を受話器の底の声は告げゐる
窓をうつ風雨となれる夜のほどろ目ざめて俺は青年ならず
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