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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
中津 昌子
冬山の遠き木靈にのどそらせ臟腑枯らして吠ゆる犬あり
ずっと前の約束の時刻が記してあるポケットの中の紙切れを捨つ
白き坂のぼりつつおもう 尾はことに太きがよろし人もけものも
街上(がいじやう)の焚火にあした人あらずしづかなるかなや火をぬらす雨
王冠のかたちに透けるガスの火に獣乳ささぐ秋のおわりは
わがうちに井戸ありいまだわが汲まぬ井戸にもたれて影ひとつあり
ムンクの絵〈叫び〉を〈あくび〉と改名す女子高生はただものでない
ひとひらの置手紙ある朝なり皿白く輝(て)り誰もをらざり
竹竿(たけさを)の朽ちて割れ目に入りし雨打ちおとしつつもの干す今朝は
色彩のかぎりを尽す夕ぐれや今日愛されしコメディアンの死
坂を登ると見ゆる水面や登りきて打ちつけに光の嵩にまむかふ
ワイシャツの肘に乾けるご飯粒一日をわれとともにありしか
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