コンテンツへスキップ
砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
江戸 雪
壮年期過ぎむとしつつ一人称「われ」といへどもはるかなる他者
見覚えのあるコート着て長椅子に偶像のごとき妻ゐたりけり
抱きあへる感触のみをのこしつつ夢のなぎさのレアリテあはれ
告げざりし心愛(お)しめば一枚の画布(トワール)白きままにて残す
海を見るような眼をわれに向け語れる言葉なべて詩となる
黒闇(こくあん)の垂れそめにけるおもざしを嘆かひにけり父なるものは
秋空は高かりき青かりき広かりき昔昔のさらなる昔
戦(たたかひ)にゆきてかへらぬ人思へばわが身にこもり濃(こ)き秋のはな
蒼穹の深さに澄めるみづうみよ仰ぎし人をわれは失ふ
子と入らん未来のあをさ月光(つきかげ)に乳(ち)の匂ひあるブラウスを干す
真剣に聞くとき自分をぼくという君の背筋のあたたかい月
きみとわが頒かつこころのきれぎれをさびしく微笑(えみ)ている窓がある
投稿のページ送り
前のページ
固定ページ
1
固定ページ
2
固定ページ
3
固定ページ
4
…
固定ページ
13
次のページ