『てまり唄』永井陽子
永井陽子の歌を読むたびに思うのは、そのしらべの良さである。それによって一首が音楽のように響き、物語性を帯びでくる。この歌は、母を見送った後の日々を歌った一連の中のものだが、観世音や大仏殿や仁王とともに鹿が登場するので、場所は奈良であろう。そして、「阿修羅」と「迦楼羅」は興福寺の八部衆のものだろう。その「阿修羅」「迦楼羅」にも鹿たちの眠りに重ねるように、「おやすみ」と声をかける。それだけで世界中の時を眠らせようとするかのようだ。
この歌は、眠りによる深い癒しを祈る子守歌なのである。と同時に、「おやすみ、おやすみ」と自分自身に魔法をかける言葉の裏に、どんなに深い孤独が潜んでいるのだろうかと、読者に思わせるのである。一九九五年刊行。
