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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
佐藤 弓生
古生代いかなる音の満ちゐしか鳥の囀りなき世界とは
昏れおちて蒼き石群[いはむら]水走り肉にて聴きしことばあかるむ
もやもやとだまされてゐる春日暮れ二円切手のうさぎ愛[め]ごくて
憶えたことすべてわすれて想像でうろつくかもねいつか上海
むかしむかしの小川が流れてゐるやうだ芹食べてあかるく澄んでゆく咽
髪の毛をしきりにいじり空を見る 生まれたらもう傷ついていた
風の午後『完全自殺マニュアル』の延滞者ふと返却に来る
わがピアノ薔薇のフェンスを越えゆけば苦しき日日は虚空に溶くる
五月来る硝子のかなた森閑と嬰児みなころされたるみどり
ひとひらの雲が塔からはなれゆき世界がばらば らになり始む
犀星は詩のなかにのみふるさとの輝きてをりとほくやさしく
緑道を黙って歩く父だった四月の霧をほおひげに受け
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