2011年08月のアーカイブ

なにとでも呼べる気持ちの寄せ植えにきみの名前の札をさしこむ

このごろは近視がすすみ裸眼では生徒の群れがゲルニカに見ゆ

心強く生きがたきかな晩夏光輝く茄子の畑にゐたり

少年はあをきサロンをたくしあげかち渡り行く日向(ひなた)の河を

てのひらにつつむ胡桃の薄緑この惑星に子よ生れてくるしめ

離れ住む朝(あした)の卓に皮膚うすきクロワッサンを互みに置けり

地球規模で淋しいのですアボカドの茶色の種がなかなか取れず

放射能も蚊取り線香で落ちちやえばいいのにね いいだらうね

殺したき男ぐらぐら煮てゆけば口あけて貝のごとき舌見ゆ

夏帽のへこみやすきを膝にのせてわが放浪はバスになじみき

あやまちて野豚(のぶた)らのむれに入りてよりいつぴきの豚にまだ追はれゐる

水のごと 身体をひたすかなしみに 葱の香などのまじれる夕

ホイッスルに咎められつつ駆けぬけぬゼブラゾーンの水はねかへし

一束の野の青草を朝露と共に負ひゆく農婦に遇へり

どうしても抜けぬ最後のディフェンスは塩の色した夏だとおもえ

山城のみづのみ草につながれて駒ものうげに見ゆる旅かな

つるし置く塩鱒ありて暑きひる黄のしづくまれに滴るあはれ

三年ガラス拭かぬわれが日に五たび床を拭き床に映る鳥影

在りやうをわれに咎めに朱夏来たる容赦なし<蝉時雨>浴びせて

大き団扇持ちて机辺に胡坐せりむろんく-ら-はあまねかれども

流灯に重なる彼の日の人間筏わが魂も乗りて行くなり

声もたぬ樹ならばもっときみのこと想うだろうか葉を繁らせて

さかみちを全速力でかけおりてうちについたら幕府をひらく

耳を切りしヴァン・ゴッホを思ひ孤独を思ひ戦争と個人をおもひて眠らず

おほかたの友ら帰りし構内に木の椅子としてわれを置きたし

海風は君がからだに吹き入りぬこの夜抱かばいかに涼しき

襟元をすこしくづせり風入れておもふは汝(おまへ)かならず奪ふ

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