2011年09月のアーカイブ

つぎつぎとフォルダに来るspam mailさむい鷗の群れかも知れず 

人はかく大人にならむ はにかみて「Bonjour」と言ふ時期のみじかさ

障子戸がひらきむかしのいとこたちずさあっとすべりこんでくる夜

蟬脱のさまに飛行機の或部分ひらきしづかに車輪のいづるを

今夜どしゃぶりは屋根など突きぬけて俺の背中ではじけるべきだ

ドアを出づ、―― 秋風の街へ、 ぱつと開けたる巨人の口に飛び入るごとく。

涅槃図の鳥獣のごと野に立てばまた逃げ水の父あらはるる

逢ふといふはこの世の時間 水の上を二つの星の光(かげ)うごくなり

全うするとはいかなることかくれがたの防火バケツに降り込むみぞれ

身ごもりし娘と自転車を押してゆく祖師ヶ谷大蔵処々梅花盈(み)つ

木の影の塀をつたひてくる夕べ自転車を押すは吾が父ならん

わたしの自転車だけ倒れてるのに似てたあなたを抱き起こす海のそこ

テーブルを挟んでふたり釣り糸を垂らす湖底は冷たいだろう

はるばるとよさの湊の霧はれて月に吹き越す稲のうら風

小さめにきざんでおいてくれないか口を大きく開ける気はない

暗やみのかたちに合はせ何度でも鋳直すことのできるこの指

池の面にさし出でし桜の幹に鳴く遠世のごときひとつかなかな

たくさんの空の遠さにかこまれし人さし指の秋の灯台

うす青き朝の鏡にわが眉の包むにあまるかなしみのかげ

大きなる手があらはれて昼深し上から卵をつかみけるかも

つまらなき世辞をさびしみ樹を下る一匹の蟻をわれは見ていき

したたれる蒼さするどさ受けながら身はつくねんと秋空に向く

背中から十字に裂ける蝉の殻 生きゆくは苦しむと同義

ふかぶかと背に包丁の入りしときびくんといさなの尾が跳ね上がる

白桃の和毛(にこげ)ひかれり老いびとの食みあましたる夢のごとくに

夕皃(ゆふがほ)の花しらじらと咲めぐる賤(しづ)が伏屋に馬洗ひをり

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