光森裕樹


人間の生まれる前は人間の生まれる確率0だつた星

香川ヒサ『PAN』(柊書房:1999年)


(☜6月14(水)「生きると死ぬ (5)」より続く)

 

◆ 生きると死ぬ (6)

 

「人間」の定義はなんであろう。ほかの動物たち、あるいは太古の類人猿と人間とは確かに違う。
 

時間を遡れば、地球上に人間が存在していない時代が確実にあり、その時代ではなるほど人間の誕生確率は全くなかったことになる。それでは、今存在している人間は、一体どこから来たのか。小野茂樹の歌「鋪装厚き道にて人は行き交へり豊かに生まれうまれ継ぎつつ」と続けて読むと、互いに矛盾関係にあるように思われ、ますます頭が混乱してきそうだ。
 

同歌集には次の一首もあった。
 

人間の歴史の始め 人間の歴史の始め問ふことだつた

 

思えば「人間」の定義のひとつに、自らの存在を問う存在であることが挙げられるのかもしれない。
 

人間の誕生確率が0だったにもかかわらず、人間は誕生した。ならば、誕生した人間という存在が永遠に続いていくことにも、何の保証もないということなのだろう。生きている不思議を、あらためて思う。
 
 

(☞次回、6月19(月)「生きると死ぬ (7)」へと続く)