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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
前田 康子
昼どきになればスパナも錆捻子も散らかせるまま飯くひにゆく
敷くためにあらずからだをくるむための白きシーツをときどきおもふ
でで蟲の身は痩せこけて肩書の殻のみなるを負へる我はも
夕がたの日影(ひかげ)うつくしき若草(わかくさ)野(の)体(からだ)ひかりて飛び立つ蛙等(かはづら)
狂うことなくなりてより時計への愛着もまた薄れゆきしか
十六歳の君の写真が見下ろすは柩に眠る十八歳の君
常通る汽車の火の粉に焼けたりし露草の花曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の花
過去形を使った文を作らせて母の亡きこといまさらに知る
大川にあと白浪の春立ちて名探偵もねぶたかりけり
人去りし公衆便所の白きドア 開きたるまま日の暮れてゆく
空高く手を 人体はみづからの腋下に口をつけえぬかたち
何ひとつたくはへ持たぬ鳥の群身ひとつにて北へ飛び立つ
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