2019年11月のアーカイブ

山中律雄/父の死を忘れて父を問ふ母にその死告ぐればいたく悲しむ

森尻理恵/一応はわれは大人で頭下げ頭上げしときその老いを見つ

福島泰樹/前衛は精神なればあえかなる歌の翼を濡らすともよし

森尻理恵/姫神山は花崗岩ゆえ噴火せぬと朝日に光る山を指差す

村上一郎/わかくさの妻らを送り家を出て冬浅(あさ)き日に死にゆきにけり

森尻理恵/廃屋のめぐりに赤きサルビアが手入れされいるように咲きおり

青柳守音/降りたった蟹よりあかいヨコハマはかすかに焚火のけむりが匂う

加賀要子/スクリーンを外し観客席を運び去りし劇場空間を人らと清む

穂積昇/岡持につきては消ゆる雪を見て春の気配の近づくを知る

すみません。

吉田優子/カラメルをとろり煮る午後猫が鳴く昨日はどこにもありませんよう

山川藍/履歴書の写真がどう見ても菩薩いちど手を合わせて封筒へ

大島史洋/あろうことかもやしが風に舞うようとわが大車輪を妻は評しぬ

齋藤史/携帯電話持たず終らむ死んでからまで便利に呼び出されてたまるか

大島史洋/この海のむこうにアメリカ くりかえす吾子とすこし恥ずかしきわれと

熊谷純/ほの香るアルコールにて手を浄めストアスタンプの日付を変へる

米川千嘉子/悪夢のごとくスーパーマリオが似合ふ首相リオにあらはれわれは萎えたり

笹本碧/下り坂下から見れば上り坂インテグラルのかたちをえがく

米川千嘉子/冬晴れに背の縮みたること著(しる)しわが母コウテイペンギンの背丈

井野佐登/読みさしの歌集を置きて夜のほどろレセプト点検始めたりけり

米川千嘉子/ハンドルを回せば父母いもうとも薄く出で来し洗濯機の記憶

佐伯裕子/夜ごとに遊園地にわく錆などの分けの分からぬ悲をやり過ごす

米川千嘉子/ひとは誰かに出会はぬままに生きてゐる誰かに出会つたよりあかあかと

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