松村 由利子


フェミニズムってこんなことだっけ朝のみの女性専用車両が走る

          久々湊盈子『風羅集』(2012年)

 

「フェミニズム」という言葉が嫌われて久しい。そのことを思うと、80年代後半から90年代半ばにかけて、夫婦別姓を求める運動や女性の健康を問いなおす活動について取材した私は、少しばかり苦い気持ちになる。

「男性並み」という働き方は、本当の意味での男女平等ではないのではないか。「暗い夜道に気をつけよう」という標語は、男性からの見方で作られたものではないか――。フェミニズムは、自分の凝り固まった考え方をやわらかくほぐし、世界の見方を変えてくれた。あの時代、「フェミニズム」という言葉は確かに輝いていた。

この歌の作者は、きっとその時代の熱を知る人だろう。「女性専用車両」は、まあ、あればあったで助かる人もいるかもしれないが、そんなものでなくて実現させたいシステムがもっとある。嘆息まじりのような「フェミニズムってこんなことだっけ」という破調が、むなしく寂しく響く。

実際には「女性専用車両」だけが走るわけではなく、連結された車両全体が走るのだが、下の句の素気ない表現が妙な勢いを生み、女性専用車両だけが走っていくような、そんな奇妙な光景を思い浮かべてしまう。