松村 由利子


雲雀料理の後にはどうぞ空の青映しだしたる水を一杯

          尾崎まゆみ『微熱海域』(1993年)

 

「雲雀料理」は、『月に吠える』に収められた詩篇の一つである。中世ヨーロッパでは、ヒバリをパイに詰めた料理も愛されたから、本物のヒバリ料理と取れなくもないが、この一首はやはり、萩原朔太郎の詩のイメージを盛り込んだ本歌取りと読みたい。

朔太郎の「雲雀料理」は、いつ読んでもうっとりさせられる。

「五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする。したたる空色の窓の下で、私の愛する女と共に純銀のふおうく(・・・・)を動かしたい。私の生活にもいつかは一度、あの空に光る、雲雀料理の愛の皿を盗んで喰べたい。」

この一首は、まるで朔太朗の「愛する女」からの返歌のようだ。雲雀料理を食べ終え、形のよい白い手で「純銀」のフォークを皿に置いた彼女は、婉然とコップを差し出す。なみなみと注がれた水が、「空の青」を映して揺れる――。

1991年に作者が短歌研究新人賞を受賞したとき、「微熱海域」三十首の冒頭に置かれていたのが、この歌である。私は心底、打ちのめされた。何て美しく、完璧な一首なんだろう、と眩暈のようなものを覚えた。その感動は今も変わらない。