松村 由利子


いまだ掬はぬプリンのやうにやはらかくかたまりてゐるよ夏の休暇日  

        上村典子『草上のカヌー』(1993年)

 

休暇はいつの季節も嬉しいものだが、とりわけ夏はありがたい。「さあ、何をして過ごそうか」という明るい気持ちが、読む人を和ませる。

そして「いまだ掬はぬプリン」の、涼しげでありながら、濃厚な美味しさを期待させる風情がとてもよい。アイスクリームであったら、どんどん溶けてしまうから、ここは「プリン」でないと落ち着かない。「やはらかくかたまりてゐる」には、案外みっしりとした密度があり、「夏の休暇日」を実のあるものに感じさせている。

緻密で端正な文体をもつ作者が、「かたまりてゐるよ」と口語を用いたのは、「プリン」のふるふるとしたやわらかさと対応させるためでもあるだろうが、夏という季節独特の心躍りを表す表現として選んだのだと思う。

プールへ、海へ。あるいは高原へ。思い切ってシーツやカーテンなどの大物を洗濯するのも爽快なことだ。「いまだ掬はぬ」にこめられた、「何でもできる」「何でも選べる」という自由な気分こそ、夏という輝かしい季節の贈りものである。