杉﨑恒夫『パン屋のパンセ』(2010年)
ペルセウス座流星群は、毎年八月の中旬に見られる流星群である。今年はちょうど十二、十三日あたりが活動の極大と見られる。十四日が新月なので、観測するには条件がいい。
一年のうちの決まった時期に見られる流星群はいくつかあるが、ペルセウス座流星群はちょうどお盆のころに見られるということで、作者も何か特別な感慨を抱いたのだろう。お盆には各地で、亡くなった人たちの魂を迎えたり、送ったりする行事がおこなわれる。「精霊」という言葉から、私は長崎の「精霊(しょうろう)流し」を思い出した。これは死者の魂を浄土へ送る行事だが、この歌では精霊たちが流れ星と共に、地上へ帰ってくるイメージである。
作者は国立天文台に長く勤務した。流星群の観測される仕組みなど熟知していたに違いないが、流星群と精霊を重ねた。その詩ごころに魅了される。
一年に一度、死者たちが帰ってくる。それを迎える気持ちを大切にし続けたい。