松村 由利子


ねえ武器をすべて捨てたらどうかしら足の踏み場がなくなる前に 

藤田初枝『髪を切りにゆく』(2015年)

 

女性にもいろいろな考えの人がいるのは心得ているから、「女の方が平和主義」などと言うつもりはない。しかし、「武器をすべて捨てたらどうかしら」と提言できる人は、女に多いのではないかと思う。大抵の男は、そんな非現実的な理想論は口にしないものだから。

戦争をしない国であってほしい、非武装であり続けるべきだ、と話すと、必ず「スイスにだって軍隊はある」「非武装なんてあり得ない」という反論が返ってくる。それはそうだろう。それくらい分かっている。この歌の作者だって同じだろう。

けれども、人間の現実ばかり見ていても、よりよい世界はやってこない。人間は弱くて愚かなものだから、せめて「こうありたい」という理念、理想を掲げなければいけないのではないか。

歌の作者が、「ねえ」「~かしら」という、女性特有のことばを用いているのは、やわらかな響きを計算したからだ。「足の踏み場がなくなる」という事態は、感覚的にはもう、すぐそこまで来ているように思う。