松村 由利子


うっすらと脂肪をつけてゆくように貯金を増やす一年だった

 田中濯『地球光』(2010年)

 

十二月に入ると、もう今年一年のことを振り返りたくなってしまう。そして、まだまだやらねばならないことがあったのに……と落ち込む。

「貯金を増やす一年」は、決して喜ばしいことではない。仕事に追われ、レジャーや旅行を楽しんだり、好きなものを購入したりする余裕が全くなかったということなのだから。私自身も仕事ばかりの毎日で疲労困憊していたころ、「お金ではなくて、時間が欲しい!」と切実に思っていた。作者の気持ちは痛いほどわかる。

この一首が収められた歌集が出版されたとき、作者は三十四歳だった。青春期を過ぎた身体は、「うっすらと脂肪をつけてゆく」。そのかなしみと合わせて、ただ貯金の額が増えてゆくのみの日々が焦燥感をもって詠われている。

それほど貯金が高額になったわけではない。あくまでも「うっすらと」という感じの増加なのだ。あれだけ身を削るようにして働いた結果が、この貯金額でしかないのか――。研究職に就いている作者だから、成果が形にならなかったことへの嘆きもあるかもしれない。実験が計画通りに行かなかったり、論文を書いて投稿しても採用とならなかったり、さまざまな挫折が一首の背後にありそうで胸が痛くなるのだった。