松村 由利子


ノルウェー産ししゃもぢりぢり炙りたり地球寒冷化を説く人もいる

  久保茂樹*小川ちとせ『箱庭の空』(2015年)

 

「ふたり歌集」と書かれ、二人の歌が交互に置かれた美しい一冊。掲出歌は小川ちとせの作である。

温暖化による海水温の上昇によって、ここ数年、北海道の魚介類の水揚げ状況不安定になっている。冷たい海を好むシシャモも不漁だという。作者はそんな状況をよく知るのだろう、この歌では「ノルウェー産ししゃも」が効いている。

ノルウェー産のものは、実はカラフトシシャモという、同じキュウリウオ科ではあるが別種の魚だ。シシャモの代用魚として輸入されるようになって長いので、シシャモを「本シシャモ」と表示することもあるようだ。

ちょうど今、パリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開かれている。平たく言えば、人為的な要因による地球温暖化への対策、具体的には温室効果ガスの放出の抑制策について話し合う国際会議だ。「むしろ地球は寒冷化している」と主張する科学者もいるが、本来ならば起こり得ない生態系の変化や異常気象が人為的な要因によって生じているとしたら、次世代のためにも防ごうというのがCOPである。

作者は、そんなもろもろの状況を思いながら、「ぢりぢり」と「ノルウェー産ししゃも」を炙っている。「寒冷化を説く人もいる」の「も」に、どことなく屈託が滲む。何だか人類全体が「ぢりぢり」と炙られているのではないだろうか、と思ってしまった。