光森裕樹


灰色の空見上げればゆらゆらと死んだ眼に似た十二月の雪

鳥居『キリンの子』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス:2016年)


(☜5月15日(月)「月と空 (13月)」より続く)

 

◆ 月と空 (12月)

 

十二月の灰色の空から降り落ちてくる雪を見る。ゆらゆらとゆれながら落ちてくる雪のひとつひとつが、死者の眼のように思われる――
 

広がる空から死者の眼が降ってくるという想像は恐ろしいものだ。しかし、一首の中には何の音も感じられず、静寂を保っている。死者の眼に囲まれている自分自身の魂もふっと抜け出していきそうな予感もまた恐ろしく、しかし人を惹き寄せる美しさのようなものも感じさせる。
 

掲出歌は「職業訓練校」という連作の最後に収められている。いくつか歌を引いてみたい。
 

セパゾンの袋をコートに隠しつつ「不安時」の印字見られぬように
昼休み「家族はみんな死んでん」と水を飲みつつクラスメイトに
就職は数十年後も生きていて働きますと交わす約束

 

すでに家族を失おってり、自分自身は抗不安薬を服用している。家族のことを話すことはできても、自分自身の状況については打ち解けて話すことができていない様子が浮かぶ。職業訓練校に学ぶということは、当然就職を目指すことであるが、自分自身が数十年後も世にあることに全くの実感が沸かない。
 

連作の締め括りとしての掲出歌の死者の眼には、家族の眼も含まれていたのかもしれない。そして、いつか遠い未来の自分自身の眼も――
 
 

(☞次回、5月19日(金)「月と空 (11月)」へと続く)