モルワイデ図法の地図にゆがみゆく極東といふさびしさのきはみ

大辻隆弘『抱擁韻』(1998年)

 

モルワイデ図法というのは、球面である地球の表面を、平面の地図にするための図法の一つ。

極東は、言わずもがなのことながら、「日本・中国・朝鮮・タイなど東アジア地域を、欧米から見ていう呼称」(『広辞苑』)である。ここでは、主に日本が念頭にあると思える。

 

極東が、果て、というだけでなく、欧米からみた呼び方だというところにも、ひっかかりがあるのだろう。その呼び名は、欧米が世界の中心であることを示している。

 

 

目の前の地図には、その「極東」が姿までをゆがめて描かれている。

「さびしさのきはみ」という表現に、込められたかなしみや悔しみ。苛立ちもあるかもしれない。

 

そんな極東ということばも、最近ではあまり耳にしなくなったように思う。これは90年代の歌だが、今の若い人なら端にいる方が楽でいい、と言いかねないところだろう。

この歌の思いつめようには苦しい感じがあるが、こういう思いもまたなんらかのバネになっていたはずだと思うのだ。

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