小島ゆかり『折からの雨』(2008年)
まっしろに雪に降りこめられた夜。
そのしろさの向こうに、もう一つ街があるという。
まるで絵本のページをめくるように、その街がたちあらわれる。雪のしずけさのなかに華やかな街が思い浮かぶ。
馬には、男の人と、その前に少女がひとり。
幼いなりに淑女。
ケープのついた赤いコート。手はすっぽりとマフに埋まって、毛皮の帽子。
ふと、こんな光景を想像したのは、むかし読んだものの記憶によるのか。絵かもしれない。読む人によって、ここのところは、どんな景色もひろげられる。
四句目に句切れがあって、そこでかるく切れることが、「街」に、「馬に乗る人がゆく」景を、かえって濃く重ね合わせる。
今晩、雪が降るといいな。