中津 昌子


杉山に雪降りつづきなんでこう水墨画めく視界であるか

なみの亜子『ばんどり』(2009年)

 

 

目の前にひろがる、水墨画そのままの世界に、どうしてこういう景色なんだろう、といっている。
どうしてって、こういう景色があったから、水墨画が発達したんであって、逆。

 

でも、この歌は無理無体がいいたい。

なんだってこんなにモノクロなのだ、
なんだってこんなにじっとり重く暗いのよ、
なんだってこう、人を静かなところへ押し込めようとする、と。

 

風土は人を育てもし、浸食もする。
ここでは、風土への抗いが、抗いといえるほど重くなく、ドライな雰囲気であるのが新しい。

 

はあ、とため息をつきつつも、深刻に沈まない感じに、くるりと踵をかえしてたちまちどこかへゆきそうだ、などと思う。