江戸 雪


甘えたき気持ち悟られまいとしてイルカのやうな明るさを見す

大口玲子『海量』(1998年)

すぐにでもその手に触れて甘えたい。けれど、ひとに甘えることはほんとうにむずかしい。相手が大切な、好きなひとであればあるほど、重苦しいこころを曝け出せない。
意味もなく、とりのこされそうな不安な時がある。とりもなおさずその人に支えてほしくて、屈託なく甘える自分の姿を思い浮かべたりするが、実際に顔を合わせると強がってしまう。

「イルカのような明るさ」とは、なんともいえず面白く楽しく、さびしい。
いたずらっ子のようにすこしとぼけたような顔でずっと泳ぎ続けるイルカ。回転して泳ぎながら眠るイルカ。
鳴き声も高音で、囀りのようで楽しい。

なのに、歌のなかでこのような明朗さは陰影を強く持つ。明るければ明るいほど、ひそんでいる翳がきわだつのだ。ぐらぐら揺れる気持ちを抱いて、強がる姿がうまく表現されている。

ところで、もしこんなひとがそばにいたら。意地っぱりなんだなあ、かわいいなあ、とおもってしまうだろうな。