生沼義朗


宮川大介/#マストドン その末席に君を恋う声ぞこだまのhttps://youtu.be/gsNaR6FRuO0(ピポピーピョロロ)

宮川大介(第31回短歌人ネット歌会詠草・2017年5月開催)


 

 

せっかくインターネット上の連載を持たせてもらっているので、紙媒体では説明が難しい歌を挙げてみたい。掲出歌は、自分が所属する「短歌人」で年4回開催されているネット上での歌会に出された歌である。ちなみに自由詠での歌会だった。

 

結句にホームページのURLが引用されているのが特徴で、クリックすると、ルビの「ピポピーピョロロ」が具体的にどのようなものかが、YouTube(ユーチューブ)上にアップされた音声によって理解できる仕組みになっている。説明のためのものと言えば言えるが、アップされた音声を聴いて「ああ、あれか」と思った読者も多いはずだ。これは雑誌などの紙媒体や歌会の場では不可能で、インターネットという比較的新しい媒体の機能を活かした試みであり、新しい表現方法としての可能性も感じる。

 

今のようなブロードバンドやWi-Fi(ワイファイ)による接続になる前は、自宅の電話回線から契約しているプロバイダーのアクセスポイントにダイヤルして接続する方法が主流だった。「ピポピーピョロロ」はそのときに流れる機械音で、今でもFAXを送信するときに同じような独特の機械音が流れる。

 

「マストドン」は本来は4千万年から1万1千年前に生息していたマンモスや現在の象の先祖にあたる象類の名称だが、前に「#(ハッシュタグ)」が付されているので、この歌の場合はSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のひとつである「Mastodon(マストドン)」を指す。マストドンの、Facebook(フェイスブック)やtwitter(ツイッター)との一番の違いは、ユーザーがマストドンのサーバーを誰でも自由に運用でき、利用者は通常このサーバーのひとつを選んで所属するが、異なるサーバーに所属する利用者同士のコミュニケーションも容易なことである。

 

掲出歌の読みに戻ると、「#(ハッシュタグ)」から始まる意欲的な導入は、思わず読者の眼を惹きつける。「その末席」は初句切れと一字空きが施されているものの、初句の「#マストドン」にかかることは疑いない。「君」は「ピポピーピョロロ」という音やウェブを通した世界そのものとも読めるが、自分はオーソドックスに昔の恋人と読んだ。今は別れているが、それこそインターネットがダイヤル接続だった時代に付き合っていた恋人を思い出すなかで、「ピポピーピョロロ」の音も思い出し、それが頭の中で鳴り響く。だからこそ「末席」と謙遜し、「声ぞこだまの」と昔を回顧する表現になっている。

 

そう考えると、耳がいいのだろう。この一首に宮川の音感が充分に活かされていることも押さえておきたい。下句全体に小気味よいリズムが刻まれているし、「ピポピーピョロロ」も半濁音で通すことであの独特の音の特徴をよく捉えている。ネットそのものを読んだ歌として記憶されていい歌だと思う。

 

ちなみに、作者の宮川大介さんが2017年の12月に急逝されていたことを今年の2月6日に知った。享年42。足から菌が入ったため足と腸が壊死し、入院してわずか4日目の逝去だったそうだ。最近は疎遠だったが、宮川さんとは同い年で、「短歌人」にもほぼ同時期の入会だった。心よりご冥福をお祈りする。