ミュージカルについてあまり悪く言わなかったことが結果的にプラスに働いた

佐クマサトシ「ゲームみたいで楽しい」(Website「TOM」より)

 結果よければすべてよし、とまでは言わないが、まあよかったね、結果オーライだね、とでもいうほかない。ミュージカルを嫌う人はタモリを筆頭にわりとたくさんいるような気がするのだが、ミュージカルの悪口を言う機会というのもあまりないので、まあ言わないでおくにこしたことはない。
ミュージカルの話になって、無意識のうちに警戒していたのか、当たり障りのないことだけ口にしていたら、話していた相手が、もしくはたくさんのなかの一人ないし数人が、ミュージカルの関係者とか、研究者とか、批評家とか、とにかくミュージカルについて悪く言うといろいろと都合の悪い人物だったわけである。テンションの高いことは口にしない。どこまでも平熱でものを言うことで、どうにか当たり障りなく生きていく。
それは実は傷付くことの少なくない、けっこう大変な生き様なのかも知れないけれど、そういうところを見せたくはないから何ごとも基本的にあまり悪くは言わないのだろう。結果的にプラスに働いたのはたまたまであって、マイナスに働くことだってあるに違いない。世の中には平熱で語らない、テンションの高い人がまま見られる。それでも平熱でものを言うこの人の痩せ我慢的な、武士は食わねど高楊枝的な美学が、好きだ。内容だけでなく、歌の叙述も一貫して平熱である。