吉田 隼人


偶然の中に転がる永遠を いっしょにみつけてくれたのはきみ

夢眠ねむ「おやすみ世界きゅん。」(作詞:tofubeats)

 夢眠ねむはもうアイドルをやめてしまった。でんぱ組.incというグループのメンバーだった。人によっては革命的な存在だったし、人によってはこれ以上ないというほど完璧な引退の仕方をしたとも言われる。アイドル時代ほどではないけれど、今でも時たまメディアで顔を見ることはできるし、家族連れ、特に幼い子をもつ母親のための「夢眠書店」の活動もあちこちから聞こえてくる。
夢眠ねむが作詞のtofubeatsに頼んで、自分のソロ曲のなかに短歌を織り込んでもらった、その短歌の部分を引いてきた。巧拙は問うまい。具体的な情景は何ら浮かんでこないけれど、長さのある歌詞の一部分、それもメロディを付けて、アイドルからファンへのメッセージとして歌われるものとしてはそれくらいの余白があったほうがよいのかも知れない。Cメロというのだろうか、二番のサビと最後のサビの間でわりにゆっくり、音を引いて伸ばしながら歌われるこの部分は、思いの外、印象に残るものだった。あるいは歌詞の中に短歌を織り込むには、何度も繰り返すのでない、一曲の中に一度しか出てこないメロディにはめこむしかないのだろうか。
偶然という言葉から九鬼周造を引っ張ってきたり、永遠という言葉から西田幾多郎や波多野精一を引っ張ってきたりすると、長たらしくて野暮になるからやめておこう。永遠は瞬間の影なのか、永遠の影が瞬間なのか。世界の始まりすら偶然に過ぎなかったとすれば、永遠もまた偶然の中にしか転がっていないのだろう。「きみ」が出てくる歌はあまり、というか明確に好きではないが、この「きみ」は一首全体が、あるいは一曲全体がもっている薄さと同じ薄さだからか、さほど悪感情はおぼえなかった。