友人がベジタブラーになったらしいならなくていいと思いました

平英之『早稲田短歌』42号

ベジタリアンを通り越してヴィーガンについての議論や、ときには非難もみられる昨今だけれど、ベジタブラーはしょうもない感じがしてガクッと肩と膝の力が抜けるというか、失笑に近いような笑いを漏らしてしまう。ベジタブラー。ミックスベジタブルの小さなつぶつぶをひとつひとつ食べてニコニコしていそうである。単なる記憶違い、言い間違いのたぐいなのだろうが間が抜けているのがとてもよい。

そして語り手はべつだんベジタブラーになったらしい友人を止めもしなければ訂正もせず「思いました」と小学生の作文のように締めくくる。ギャグや悪ふざけの類いには違いないのだが、ともかく嘘はついていない。ベジタリアンやヴィーガンになるならそれ相応の信条や健康への配慮あってのものだろうがベジタブラーには「ならなくていい」。「らしい」の伝聞といい語り手はとにかく冷めていて、しかし冷笑的ではない。ただ淡々としているのがおかしい。