吉田隼人


青鷺、とあなたが指してくれた日の川のひかりを覚えていたい

笠木拓『はるかカーテンコールまで』(港の人:2019年)

 忘れてしまうのだろうか。川のひかり、それだけが記憶に残り続けて、日付や「あなた」は薄れ、消えていってしまうのか。記憶と忘却と、どちらが恩寵であろうか。あなたのことは忘れてしまってもいいのかも知れない。あなたは消え、指先も消え、青鷺も青をほのかに含んで翳った白だけになり、やがてジャコメッティの彫刻よりも細くなって消えていく。ただ川のひかりだけが残る。

 いや、川のひかりは残らないのか。覚えていたいと切に願えば願うほどすべては忘却の彼方に去ってしまうことは痛いほどわかる。いずれ忘却の痛みすらも忘れてしまうだろう。それでもまだ「覚えていたい」のだ。すべてが消えてしまって、最後にその願望だけが残っているとしたら。……記憶と忘却と、どちらが残酷であろうか。