中川佐和子『卓上の時間』(1999年)
並んで眠っている。
枕元の目覚しがジャーンと鳴る。
もっとソフトなピピピピピという音かもしれない。
同時に伸びた手というところに、ふたりともまだ眠い感じが伝わる。
さて、この後どちらが諦めて先に起き出しただろう。それとも二人とも、もう少しだけ浅い眠りのなかをただよっただろうか。
あわただしい、何の変哲もない一日が、しかし、今日という日の新しさをもって始まろうとする。
重なった手の感じは、あまりに日常的すぎて、その一日に何も残さないようでありながら、やはり二人の生活の底を、無意識の内にも何か確かなものにしたであろうと思う。