ゆふづつのかゆきかくゆき春秋を汝ながまなざしに揺るる星こそ

(須永朝彦『東方花傳』引用は『現代短歌大系11』三一書房、1973年による)

 かゆきかくゆき、が軽快で救われる気持ちになる。かゆき、と書かれると蚊にでも刺されたような気がするが、ここは続く「かくゆき」の短縮形とみるのが自然だろう。

ゆふづつ、も星ならば、あなたのまなざしのなかで揺れているのもまた星だ。目のなかで星が揺れているのは少女漫画では珍しくなかったわけだが、満点の夜空に輝く星ではなしに、天球上を移動し続ける、それもまだ夕方の星なのがはかなげで、それでいて明るさを感じさせて心に残る。「こそ」止めは何を省略しているのかわかりにくいが、一首としては意味内容がほぼ一貫しているので体現止めの強化ぐらいにとっておくのが自然だろうか。中身よりは韻律の軽妙さで読ませるような明るい歌である。