ふいに雨 そう、運命はつまづいて、翡翠のようにかみさまはひとり

井上法子『永遠でないほうの火』(書肆侃侃房:2016年)

 かわせみのようにかみさまはひとり、という下の句が印象的な一首である。孤独に川辺の枝にとまるカワセミの青い青い姿が目にしみるようだ。その青さと響き合うかのように不意に降り出す雨。それは運命のつまづきなのだとわたしは言う。

運命をつかさどる神様はカワセミのようにひとりきりで、不意に降り出した雨に何を思うのだろう。不意に雨を降らせる運命のつまづきに、一人きりの神様を思うわたしはただ「そう、」とつぶやくだけだ。まるでわたし自身もまたすべての運命を知る神様ででもあるかのように。