殺してもいいけどここからここまでは親に届けてあげて泣くから

松永洋平(『率』7号:2015年)

 命乞いではない。殺されるかも知れないことはもはや諦めている。どこかユーモラスな口調ですらあるのは死を前にした心境のあらわれか。

けれど「ここからここまでは」親に届けてあげてほしい。死体を放ったらかしにしないで、バラバラにするにしても「ここからここまでは」届けてあげてくれ。最後の別れにそこだけは見せてあげてくれ。「泣くから」はわたしが泣くのか、親が泣くのか。どちらも泣くだろう。ユーモラスな見かけながら、つらい一首である。