吉田 隼人


うろこは一枚一枚まぶたの重さなので今はねむりたい深海魚のとも

菱川善夫(『菱川善夫歌集』短歌研究社:2013年)

 批評家として知られる菱川善夫の若き日の短歌作品より引いた。

眠くなるとまぶたが重くなる。そのまぶたの重さがうろことなって前進に無数にある「深海魚のとも」。それは眠りたいよなあ、と眠るのが好きな自分などは思ってしまう。

深海魚の(ような)眠りというモティーフに何より惹かれる。暗い、深い、静かな海の底でじっと眠りに就くイメージには、メランコリックな心情を惹き付けてやまない何かがある。黒に近い濃いブルーで描かれているようだ。

全身がまぶたのように重くなってしまった。今はもうただ眠りたい。そんな感覚を分かち合わせてくれるような一首。