吉田 隼人


わが指に小さく光る靑き石見つつも遠きわたつみを戀ふ

片山廣子『翡翠』(引用は『現代短歌全集3』筑摩書房:1981年による)

指輪の石を見ながらもその青に、遠く届かない海を想って恋い焦がれる。指輪という幸福の象徴のようなものを所有しているのに、心は届かない遠い海に焦がれている。それはわたしがこの世にどこか置き所のないように感じて、海に親しみを感じてしまうからかも知れない。

いぶかしみ世は我を見るわたつみの底より來つる少女の如く 同上

世の中はわたしをいぶかしんで見る。その視線に晒されながら、わたしは自分を深海から来た少女のように感じる。作者のなかで海は別世界ないし他界を構築しているようだ。他界との交信のなかでわたしは存在している。指輪の石に、他人からの視線に、わたしは自分のあり得たかも知れない出自としての海を想う。その海への渇望はきっと、本当の海を見たところで癒されるものではないのだろう。