青空は青空だけのもの。泣いても笑つてもくれやしない。すきとほつてる

立原道造(『立原道造全集 第1巻』筑摩書房:2006年)

立原道造はひところ自由律の短歌を作っていた。そのなかの一首。

戦前の対談など文章を読んでいると「~してゐる」が「~してる」と砕けた言い回しになっているのを思いの外よく見かけて意外の感に打たれたりするのだが、この歌の「すきとほつてる」にもその感じを受ける。口語自由律を何とか成立させようとして選ばれた表現なのだろうが、逆に立原の詩には見られないような砕けた口語表現を導入している。

青空は青空だけのもの。そこに人間の感情を託すことは許されない。泣いても笑ってもくれない。それも「くれやしない」というあたり、下町育ちの立原道造の口調がうかがえるようでもある。