吉田 隼人


エスカレーター、えすかと略しどこまでも えすか、あなたの夜をおもうよ

初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』(書肆侃侃房:2018年)

平英之の評論に引かれていて心惹かれた一首だった。

上野駅から東北新幹線に乗るには長い長いエスカレーターに乗る必要がある。長いエスカレーターには強い風が吹いていて、帽子などを飛ばされないように注意との貼り紙が出ていたこともある。コロナ禍以来、故郷に帰ることがかなわなくなって、あるとき大江戸線の駅かどこかで長いエスカレーターに乗っただけで帰れていない故郷と家族を思って涙ぐんでしまったことがあった。

そのエスカレーターをえすか、と略す。あるラジオに出ていた芸能事務所の裏方さんが昔は芸人コンビで「エスカ・レイタ」だったと聞いたことがあるが、こちらの「えすか」は頼りない少女のようで、えすかの行く末を思うと何か切ないものがある。えすかは夜、じっと動かずにいるのだろうか。ずっと動いているのにどこへも行けないエスカレーターのえすか。夜、されるがままに整備されているのかも知れない。えすかという名を知らされてしまっては、その夜に遠く思いを馳せないではいられなくなってしまう。