落魄の身はいづくまで川の上を渡りゆく白鷺ときに光りて

藤井常世『紫苑幻野』(引用は現代短歌社第1歌集文庫版、2013年による)

白鷺からは、どこか哀れな感じを受ける。白鳥も白鷺も見られる土地で生まれたので、白鳥などと比べて白鷺はドブ川だったり寂れた田んぼだったりにいるイメージがあって、その優雅な立ち居振舞いに比して没落貴族のような雰囲気を漂わせている。

落魄と言われるとまさに前世から落ちぶれて白鷺になったようで、落ちぶれたのは白鷺なのかわたしなのか、いずれにせよ沈んだ気持ちで川の上をすーっと水面と平行に滑るように飛んでいく。むかし学校へ行く途中、川の上を飛んでいる白鷺が猛吹雪に吹き返されて前に進めないでいるのを見たのが今も目に焼き付いている。この白鷺はそこまでひどい目に遭ってはいないが、ときに光りて、というのが寂しさを際立たせる。