吉田 隼人


海に花手向けるときのくらさにて少女は抱いた子猫を放す

楠誓英『禽眼圖』(書肆侃侃房:2020年)

少女が抱いていた子猫をはなす。それだけならほほえましい情景が、上句で一気に不穏なものになってくる。ひょっとして少女は心ならずも子猫を捨てるのではあるまいか。そんな想像さえ連れてきてしまう。

海に花を手向けるというのは言わずもがな、海での死者に花を供える行為である。ブーケトスのように投げ込んではいけないので、水面にそっと置くようにしなければならない。死者に何かを供えるように、子猫をはなす。はなした子猫はもう帰ってこないような気がしてしまう。