吉田 隼人


欺さるはどちらといふにあらざればけふもしらしら雪の散るらむ

紀野恵(『新星十人』立風書房:1998年)

騙したつもりで騙されているというようなこともあるのだろう。騙した側と騙された側とどちらが最終的に得をするのかわからないことがある。騙すも騙されるも、わたしには関係ないと突き放したような感じがある。

「どちらといふにあらざればけふもしらしら」と言うから、わたしは白けてしまっているようでもある。そしてしらしら雪の散るらむ、と歌は結ばれる。らむ、は現在推量の助動詞だから、わたしはいま雪の見えないところから「けふもしらしら雪の散るらむ」、どうせ今日も雪が散っているのでしょう、とつぶやいているのだろう。騙した側も騙された側も、いまは白く染め上げられてただ突き放されている。