吉田 隼人


だしぬけになんとはなしに藤色の服が着たくてユニクロに来る

荻原裕幸『リリカル・アンドロイド』(書肆侃侃房:2020年)

福永武彦は、藤色の背広を軽井沢で買って持っていて、当人はエッセイでサイズがぴったりで売れ残っていて安かったから、と弁解して恥ずかしがってみせていたものの、周りからはダンディな福永らしいお洒落だと受け止められていたらしい。

背広はともかく、「だしぬけになんとはなしに」藤色の服が着たくなったらユニクロへ行くか、ユニクロのネットショップに注文すれば変な色の服を着ることができる。山吹色や若草色、ワインレッドなどの服が手に入るだろう。この歌のいいところはあくまでネットショップではなくてユニクロの店舗へ行っているところだろう。ユニクロの大きな店舗に並ぶ色とりどりの服。そのささやかな祝祭感とでもいうようなものは、だしぬけになんとはなしに出向いて得るのに相応しい。