吉田 隼人


烏羽玉の音盤ディスクめぐれりひと無きのちわれも大鴉を飼へるひとりか

大塚寅彦(『セレクション歌人 大塚寅彦集』邑書林:2010年)

エドガー・ポーの「The Raven」は日本では見られないワタリガラスのことなのだそうで、日本で見られるハシブトガラスでも十分に大きいが、もっと大きいのだという。その大きなカラスが一人きりの寂しい部屋に荒涼たる夜に「Nevermore」と叫びながら入ってくるというのはただならぬ感じがある。

自分は世代ではないのでレコードが回っているのを見たことはないのだが、ポーの詩に合わせて、ここでは古めかしい蓄音機のイメージでいきたいところだ。カラスのように黒いレコードが静かに回っている。みんなは去ってしまった。わたしはいまひとり残って自分の胸のうちに巣食う音盤のように黒いレイヴンに思いをいたす。この歌に惹かれること自体、自分もまた胸のうちにNevermoreと鳴く不吉な鳥を飼っていることの証左なのかも知れない。